30.自動ミニトマト栽培機(構想編) (2021.4.26-2021.5.26)

いよいよ応用編として、Raspberry Piの実用化について考えたいと思います。私はしばらく前から、毎年ミニトマトを駐車場の端にある小さな畑で栽培してきました。元々は父が道楽で家庭菜園としていた場所ですが、私自身は農作業の経験も無いし趣味でも無いのでノータッチだったわけです。しかし、父が作業できなくなってからは、代わりに私がミニトマトやキュウリ、ニンジン、大根等を植えていました。素人なので自慢できるような出来ではありませんでしたが、それでもそこそこ食べられるような収穫はありました。中でもミニトマトは、ほとんど放っておくだけの状態だったのに、結構実って良い実が収穫できたのです。その後、駐車場の土地を処分することにしたことから、3年程前からは庭の一角に植木鉢(余っていた大型の鉢)を置いて育てるようになりました。土壌や根が張る広さの影響で畑のようには育ちませんでしたが、それでも3本植えて200個以上は収穫できたため、素人としては十分満足できる結果だと思っています。

例年3本植えていたのは、失敗しても良いように1本は予備と考えてのことです。これまでの経験では全くの失敗は無かったので、今年は2本で臨むことにしました。乾燥に強いので生育にほとんど手間のかからないミニトマトですが、育てば茎を固定して安定させたり、水やりも鉢だと乾き過ぎないように注意する必要があります。少しでも手間をかけずに育てられれば、それに越したことは無いはずです。そこで、せっかくRaspberry Piの学習もしているので、ミニトマトの栽培をなるべく自動化できないかと考えました。いきなり全てをと言うわけにもいかないので、順番にステップアップしていきたいと思います。栽培のための基礎的なデータも必要なので、並行して調査も進めることにしました。何はともあれ、今回栽培に使うのは写真のような鉢植えです。まだ植えて1週間程であり、育てながら栽培機の構想を進めるつもりです。

普段の作業として一番手間となるのが水やりです。1日1回を目安にしていますが、ミニトマトはあまり水を与え過ぎてもいけないので、土の乾き具合を見ながら判断しています。最近は手動・自動で少しずつ水を補充する装置もあるため、今年は何か試してみたいと考えていたところ、ホームセンターで写真のようなものを見つけました。左はペットボトルの先に付けるコックで、栓を開閉して水を出したり止めたりできるようになっています。水を入れたペットボトルから必要に応じて水を出す器具で、本来の目的はどこでも手洗いできるもののようです。栓の部分を電動で回すようにすれば、自動的に水やりができる装置になります。右は自然に任せる形で水を補給するノズルで、やはりペットボトルを水タンクにするものです。ノズルを土に挿しておけば土の中の水分量に応じて水が染み出し、常に一定の水分を保つようにします。簡単な器具でどれほど効果があるかはわかりませんが、実験してみる価値はありそうです。参考までに価格は税込みで左が207円、右が259円でした。いっしょに使うペットボトルはリサイクルなので0円です。

本来の構想からして、本命はやはりコック付きの補給器です。土中の水分量は湿度計で測定し、ある程度乾燥してきたら補充するなり、常に一定の保湿を維持するように水を少しずつ補給し続けるなど、制御方法は色々考えられます。条件を変えて調査する必要があるため、別途実験によって検証を進める予定です。構想では地中と大気中の温度と湿度を常時計測し、天候や時間による変化を把握した上で、後の制御に活かしたいと思います。

まずは簡単なノズル式で水やりを実践してみます。ペットボトルはお茶が入っていた小型のものです。どんなものでも構わないので、適当に身近にあるものを利用すれば良いでしょう。ノズルと組み合わせて水を入れたものが下の写真です。使用前の注意として、ノズルの先端から2センチ位の場所にピンで小さな穴を開けます。試しに逆さにすると、そこから勢いよく水が出ます。原理的にはノズルの外の土(水を含む)とペットボトルの内圧との差で、ほどよく水が染み出すようになっているようです。かなり条件がアバウトなので、穴の位置や数等の調整が必要になるかもしれません。期待通りの性能を発揮するかは微妙なところです。また、透明のペットボトルに水を入れると、レンズ効果でどこかに焦点を結び発火の危険があるため、日よけや塗装する等の対策が必要になるかもしれません。今回は実験的なこともあって、周囲に注意しながらそのまま使うことにします。

  

ノズル式のこの器具は便利ですが、いちいち水を補給するために土から引き抜いて、水を入れた後でまた戻す作業が必要です。水の補給を簡単にするには、ペットボトルの底を切り取った上で、逆さにした時に上からそのまま水を入れるのが簡単と思えます。その場合、水自身の圧力で中の水が短時間に先から流れ出てしまう可能性があるのと、水が上から蒸発してしまう弊害が考えられます。一方で上が開いていれば、雨が降った時に水が自動的に補充される効果も見込めるわけで、今後実験を通して検討していきたいと思っています。

続いて鉢側の準備です。成長すると茎を固定しなければならなくなるため、写真のように周囲に支柱を立てて備えます。今回はホームセンターで売っているプラスチック製の既製品を使うことにしました。支柱は太さ8ミリ、長さ120センチの5本セット(1鉢で3本+1本使用)を選択、支柱固定用リングは直径37センチほどで1鉢に2個使うことにします。前者の価格は税込みで294円、後者は2個で698円でした。このリングは直径の異なる3種類の支柱を固定できるようになっています。ミニトマトはさほど荷重がかからないので、一番細いものでも大丈夫でしょう。適当に茎が伸びたところで安定させるために、中央にも支柱を1本立てることにしました。とりあえず、ここに茎を軽くヒモでくくりつけて(締め付けないように)、倒れないようにします。そのため、苗は中央から若干外側にずれた所に植えています。


支柱を立てて水やり器をセットした状態。

最終的には茎をヒモで縛らなくても済むように、何かガイドを追加して支えるようにしたいところです。茎を中心とした中央部分の成長を阻害しないように、円柱状のエリアは何も無い状態が望ましいと思います。枝が伸びてきた時にガイド周辺で下に垂れ下がらないように、受けとなるような部材が必要になるでしょう。アイデアの一つとして、リング状の針金のようなものと、内側から放射状に外に伸びる棒状のものを組み合わせて、実を下から支える台にしてはどうかと考えています。上にいくほどリングの直径を大きくして枝が外に広がるようにしておけば、成長と共に自然にこれらが支えとして機能することが期待できます。なるべく単純なもので大きな効果が得られるよう、これからも検討していくつもりです。

これまでミニトマトの栽培は土を使ってきましたが、それ以外に水耕栽培と言う方法があります。その昔、普通のトマトの水耕栽培で木のように物凄く大きく育ったものを見た記憶がありますが、確か実の数量も半端なく多かった(1万個以上?)と思います。恐らく根が無制限に成長できるため、栄養が行き届いて大きく成長するのでしょう。ミニトマトも水耕栽培に向いていると考えられるので、将来的にはチャレンジしてみたいところです。

<追記(2021.5.26)
ノズル式の水やり器はやはり簡易的なだけに、水分補給の効果はあまり期待できないと言うのが実感です。ピンで開けた穴が小さいせいもあってか、土が詰まって水が出なくなることもありました。短時間でボトルの水が無くなることもあれば、なかなか減らなかったりと、天候を見ながら観察しても相関性がさほど感じられません。不在で水やりできないとか緊急避難的な使い方はできるかもしれませんが、安定した水やりに過度の期待はしない方が良いでしょう。ところで、給水にはコック式を使うつもりでいましたが、自動栽培プロジェクトでは最終的にポンプ式の給水装置を作って実用化を探ることにしました。コストもさほどかからず、安定・確実な動作を見込めるものと有望視しています。