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38.PIONEER PL-707 -レコードプレーヤー- (2020.9.18)
PCばかりの話題が続いたので、今回は趣向を変えてオーディオ機器を紹介します。今や音楽を聴くなら携帯音楽プレーヤーと言われるデジタル全盛のご時勢で、CDすらも昨今では衰退しつつあります。そんな中で、更に古い時代のレコードが脚光を浴びています。レコードと言えばアナログの最たるもので、取り扱いも面倒で一時は完全に駆逐されたかに見えました。ところが、その面倒なのが逆に魅力のひとつでもあるようなのです。 音楽とは文字通り音を楽しむものです。携帯音楽プレーヤーは手軽に音楽を聴けますが、ながらで聴くことが多くて本当に音を楽しめているのか疑問に思うこともあります。その点、レコードは準備に手間がかかるのでじっくり聴こうとする身構えができます。個人で手を入れる余地が多々有り、ウエイトの設定を変えるだけでも音が変化すると言われます。更に、その気になればカートリッジや針、トーンアーム、RCAケーブル等もカスタマイズできます。携帯音楽プレーヤーでは、せいぜいヘッドフォン(イヤフォン)を変えるくらいしかできません。 最近は個性を重視する人が増えてきたこともあって、音をカスタマイズできる点が魅力に感じるのでしょう。人気が上昇していることもあって、新曲発表の際にメディアとしてのレコードを併売するケースも出てきました。少し前には新たにレコードプレーヤーの新製品も発売されるなど注目を浴びています。 私もこれまで複数台レコードプレーヤーを所持してきましたが、レコードの衰退と共に手放してしまいました。全てベルトドライブだったため、ゴムベルトが劣化して使えなくなったと言うのが主因です。ダイレクトドライブは魅力的でしたが、当時は高価で手が出ませんでした。直近になってようやく、今回ご紹介するダイレクトドライブのPL-707を手にしたわけです。元々は父が使用していたもので、40年近く前の商品です。マイコンを搭載したフルオートプレーヤーで、レコードを演奏して終えるまでの一連の動作を自動で行ってくれます。ただし、レコード盤のサイズや回転数を自動認識してくれるわけでは無いので、厳密的にはフルオートとは言えません。 相当の年数が経過しているのにもかかわらず、つい最近まで正常に動いていたのですが、先日使用しようとしたら回転数が定まらず、まともに演奏を聴くことができなくなっていました。見るとPLLのロックランプが点滅し、制御がうまくできていないことを示しています。さすがに年数が経過してもうだめかと思ったのですが、念のため修理を試みることにしました。ダイレクトドライブのため、駆動系の劣化の可能性は低いと思われます。確信はありませんでしたが、原因はPLLの制御回路の故障ではないかと当たりを付けました。 本機の場合、分解は比較的簡単です。まずは本体を裏返して4つのインシュレーターを外します。結構深く止まっていますが、インシュレーターを左にぐるぐると回せばやがて外れます。後は背面板を止めているビスを外せば板も外れます。プレーヤー内部はいたってシンプルで、トーンアームの制御部、操作パネル部、電源回路、ターンテーブル駆動部と大まかなブロックに分かれています。ターンテーブル駆動部は電源回路の下(裏から見て)にあります。配線が邪魔ですがビスを外せば簡単に外れて電源基板を移動できるので、少しよけてターンテーブル駆動部を止めているビスを外します。駆動部にはダイレクトドライブモーターが乗っていて、駆動部回路ごと取り出すことができます。下図は取り出した駆動部を部品側から見たものです。モーター(基板の左部分に搭載)は驚くほど薄くて軽く、もっと重厚なものと思っていた想像とは異なりました。
ネットで調べたところ、本機の修理例は見つかりませんでしたが、参考になりそうな他の事例はいくつか見つかりました。それらを総合すると、当時の機器は電子機器で度々問題になるコンデンサの劣化は少ないようで、電源も含めてコンデンサの交換で直る可能性は低そうです。コンデンサはパルス性の高周波によって容量抜け等の劣化が進むと考えられますが、アナログ時代の製品は元々の品質が良い(当然メイドイン・ジャパン)ことに加え、極端な高周波ノイズにさらされることが無いため寿命が長いようです。次に考えられるのが調整用のボリュームの劣化ですが、それだと45または33回転のどちらかが不安定になる可能性が高く、両方共ダメとなると別の原因と考えた方が合理的です。最終的に制御ICか発振素子(クリスタル)の故障と推測しました。いずれも半永久的な寿命の素子で、本来であれば故障は少ないものです。 そんな中で、同じメーカーの別機種でクリスタルを交換して修理した事例が見つかりました。本機の発振素子は下図の右下の銀色の部品です。型番らしきものは書いてありますが、検索しても周波数等のデータが得られませんでした。シンクロスコープ等があれば一発で故障を判断できますが、何も測定器が無いので賭けるしかありません。どの道、修理できなければ廃棄するしか無い代物です。ここは勘を信じてクリスタルを交換してみます。時代的にもそれほど修理事例との差は無く、同じメーカーなら回路も同様だと推測して、同じ周波数のクリスタル(12.288MHz)を発注しました。
交換した後が下図です。昨今の部品らしく、背丈がずいぶん低く小型化されています。ハンダは昔ながらの鉛ハンダなので、交換作業も簡単にできました。
後は基板を元に戻して組み戻すだけです。修理にさほど時間はかかりませんでした。さて、運命の動作テストです。今回はダメ元でしたが、それでも期待半分でやはり緊張します。結果、見事に回転が安定して修理が成功しました。PLLのロックを示すLEDもしっかり点灯しています。修理する喜びはまさにこの瞬間にあります。毎回修理がうまくいくわけではありませんが、これでまた古い機器が息を吹き返しました。部品代はわずか170円です。いつも思うことですが、たった1つの部品のメンテナンスや交換で機器が復活することも多く、メーカーはもっと修理に力を入れて、末永く自社製品を愛用してもらえるように努力すべきだと思います。20世紀型の使い捨て文化脱却は、これからの循環社会の課題でもあります。40年近く経過してもなお動くことに感激しつつ、久しぶりに手持ちのレコードを楽しみました。
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