27.SONY DTC-ZE700 -DAT- (2016.7.14)

SONYのDAT最終モデル。

25.で紹介したDTC-790の後継機となるモデルで、価格こそ80,000円と上昇していますが、実態は更なるコストダウンが進んでいるのは間違いありません。中身はスカスカで重量も軽く、外観もプラスチックの多用で高級感のカケラもありません。消え行く末路の製品は、大抵このような道をたどるものです。最後ぐらい一花咲かせる気概で超高級機を期待したいところですが、やはり企業論理は利益第一主義で、売れもしないものに金はかけられないのでしょう。

●内部
全体的にDTC-790に良く似ています。デザインを一新して、マイナーチェンジを図った製品であることが伺えます。

さすがに新しい(と言っても20年位前になりますが)だけあって、問題のRFアンプ上に実装されている電解コンデンサは無事でした。それでも何となく電解液の漏れを感じさせる部分もあるようです。いずれダメになるとすれば、予防措置で今のうちに交換しておいた方が無難かもしれません。

メカ部はほぼDTC-790のものと同じですが、乗っている基板のレイアウト等が多少異なっています。それもコネクタ位置がメンテナンス性を犠牲にする等改悪になっており、設計者自身の能力低下も見受けられます。入手した製品は最初は動きましたが、数回再生・停止を繰り返したらローディングしなくなりました。分解して確認すると、ローディングポストの軸部分のプラスチックブッシュが片方無くなっています。どこかに落ちていないか探したのですが、見つからないので既に脱落して紛失していたのかもしれません。予備のメカから拝借して取り付けたところ、再び正常に動作するようになりました。

もう1点、カセット扉が開いたままでグラグラ状態でしたが、これは単にバネが外れただけと判明したのでかけ直しておきました。これで修理完了です。なお、ローディングアームのプラスチックガイドは、あちこち割れたりヒビが入っていました。今のところスライド動作に支障はありませんが、こんな重要な部分を強度の劣るプラスチックを使ったりして、設計者の良識を疑いたくなります。それともソニータイマー(経年で発動し故障する)を意図的に仕掛けることが義務にでもなっているのでしょうか。昔アップルの製品で同じような疑いを持ったのを思い出します。両社はよく似た点があると感じるのは私だけではないでしょう。

●デッキメカ
パッと見にはDTC-790のものとそっくりです。やはりマイナーチェンジモデルで、開発費を大幅に抑制されていたのでしょう。

右上に見えるのがトレイ開閉(カセット装てん)用のモーターですが、取り付け部がベルトに引っ張られてしなる程ヤワな作りです。至るところに華奢な部分が見られ、全体的に強度不足は明らかです。コストダウンはメーカーの宿命ではありますが、ここまでくるとやり過ぎの感は否めません。製造原価はせいぜい2~3万円程度でしょうから、製品価格を考えるとぼったくり商売に映ります。

性能的にはDATの標準をクリアしていると思われ、DATならではの高音質も継承しています。使い込んでいないので操作系のコメントは控えますが、パネルは見ての通りシンプルな印象を受けます。同社のDAT最終モデルなので、長期に渡って性能を維持できるような堅牢さを期待したかったのですが、寿命を縮めるような安易なコストダウンに走ったのが残念です。

<補足>
今回の一連のSONY製DATや同社の各種VTRの修理を通じて、SONYタイマーなる言葉を改めて思い出しました。SONY製品が数年もすれば必ず壊れることを揶揄する言葉で、まるで時限式のタイマーのように発動することからこのように言われます。地雷を踏んだとも言われるのも似たような理由からです。実際のところ真偽の程は定かでありませんが、私が一連の修理で感じたのは、それは正しいのではないかと思える実感です。故障の原因として特にプラスチック部品の破損に多く見られ、材質の選択ミスや設計強度不足がその最たるものです。素人目に見ても、ここはあと1ミリ肉厚があれば破損しないだろうとか、もう少し丈夫な材質なら長期間持ちそうだと思う点が散見されます。もしも故障自体をコントロールしているのであれば、それはそれでたいした技術とも受け取れるのですが。

しかし、本来であれば故障の頻発は製品の品質を問われる事態で、メーカーの信頼性にも関わる重要問題です。果たして意図的にそのような細工を施して何のメリットがあるのでしょうか。実はメーカーにとって次のような大きな利点があるのです。
●製品の買い替えを促せる。(売り上げアップ)
●故障箇所を集中させることができるので、サービス部門は特定の部位の修理に精通すれば良い。(人員の削減・錬度の低減)
●保守部品を絞り込める。(コスト削減)
●経年による動作個体数の減少で希少性が高まる。(中古市場や修理業の活性化)
ただし、SONYタイマーを実行するためには、たとえ壊れてでも欲しくなる程の魅力ある商品が必要です。他社と同じような商品では、品質不良でたちまち信用が落ちて売れなくなってしまうからです。余程の技術力や商品開発力が無ければ、リスクが高過ぎて実行はできません。実際、私もある程度の業界事情は把握していますが、他社ではそのような意図で製品開発は行われていません。それどころか厳しい耐久試験等を実施して可能な限り高品質な製品を目指しています。特に老舗の重電系はこうした面を重視しているようです。彼らにとって品質不良は恥以外の何物でもないのです。(現在の凋落した家電業界では疑問符が付きますが・・・)

実はSONYタイマーのような不信を抱くメーカーは他にもあります。それはAPPLE社です。SONYとAPPLEは会社のイメージもよく似ており、かつてAPPLEの一部のMACをSONYが製造していたことでも蜜月ぶりが伺えます。どちらも市場に独創的で優れた商品を数多く投入しており、共にブランドイメージは極めて高いものがあります。個人的には両社の製品は好きですが、会社自体は嫌いな部類に入ります。ファンの中にも同じ思いを抱く人は多いかもしれません。一定期間で壊れるような製品を販売するような会社は嫌いだが、製品自体の魅力には逆らえない、そんな矛盾がこうした思いにさせるのでしょう。

最近はあまり新しい商品に興味が無いので現状はわかりませんが、果たしてSONYタイマーは今でも健在なのでしょうか。




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