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26.SONY DTC-57ES -DAT- (2016.6.16)
25.で紹介したDTC-790よりも少し前の世代になります。高価だったDATもコストダウンが進んで価格が下がった結果、当時かなりの数が売れたと思われます。DTC-790程には露骨なコストダウンは行われておらず、デザインも洗練されていてなかなか秀逸です。ツマミ類はプラスチック部品ですが、ウッド調のサイドパネルなど安っぽさを感じさせない仕上がりです。
本機の概要は次の通りです。詳しくはこちらを参照すると良いでしょう。 DTC-57ESは最新機能満載のSCMS対応DATデッキで、キャプスタン用とヘッドドラム回転用として、専用のダイレクト・ドライブモーターを配した2D.D.+1リールモーターメカニズムを採用し、テープの状態を直接視認できる正立透視型のコンパートメントとなっています。A/Dコンバーターには高性能の1bitタイプを採用し、モーターサーボはソフトウェアで実現しているため、高精度で高機能なコントロールが可能です。(しかし、これが経年でメカが劣化した時、制御不能となる不具合を生み出すことになろうとは・・・)。 解説では良いことづくめに思えますが、現実にはこれまでよりメカ部にも大幅なコストダウンが見てとれ、様々な弊害も発生しています。フレーム等は金属パーツが主体であるものの、プラスチックパーツの比率も高くなっていて、経年による劣化がかなり目立ちます。ダイレクトドライブはキャプスタンとヘッドのみで、リールはベルト(コックドベルト)式ドライブ、RFアンプはDTC-790と共通のものです。ヘッドクリーナーが付いていますが、経年劣化で残っていてもボロボロになり、ヘッドに破片が融着しているケースがほとんどです。長期間保管されていたデッキは、動作させる前に除去しないと悲惨な結果になります。特に回転ドラム側はテープを痛めるので極力除去すべきですが、ひどく固着して除去するのが困難な場合もあります。 回転部の止めに使用されているプラスチックブッシュも要注意で、割れたりヒビが入っているものを多く見かけます。また、ローディングアームのプラスチックガイドが割れて段差が出ているものがあり、放置すると正常なローディング動作が出来なくなります。兆候が見られたら早めに瞬間接着剤等で補強することをお勧めします。
さて、この時代の多くの精密機器には、致命的な弱点となる部品が存在します。これまでに何度も指摘してきた電解コンデンサです。特に1990年代前半の表面実装型の物は劣化が著しく、経年すれば確実に電解液を噴いて部品自体が機能しなくなる上、基板上に流れてパターンや他の部品を腐食する厄介な存在です。故障を回避しようと修理するにしても、部品の全交換は必須となります。30年も40年も前の製品で今でも稼動しているものがあることを考えると、中途半端な技術による結果が残念でなりません。 本機の場合はRFアンプと呼ばれるヘッドと直結する信号処理回路に、問題となる電解コンデンサが使われています。案の定、扱った全数が劣化していました。コンデンサが劣化すると音がブツブツと途切れたり、まったく出なくなる症状が現れます。従って故障品はまずこの部分の不良を疑うのが定石になっています。基板自体はシンプルで信頼性も高そうなので、部品を交換しておけば今後も安心して使えるはずです。なお、後継機のDTC-59ESやDTC-790等も同じRFアンプが使われています。参考までに、シールドケースは必ず付けておく必要があるので、修理後は忘れずに元に戻しておいて下さい。
トレイ開閉用のゴムベルトも伸びて劣化しているので交換します。洗浄してベルトをかけ直すだけでも延命効果があるので、部品調達が困難な場合は試してみると良いでしょう。また、リールモーターに付いているプーリーが軸の緩み(既にヒビや割れがある場合も)で滑る可能性もあるため、念のためネジロックかポリプロピレン用の接着剤等で補強しておきます。 本機でもう1つ致命的な問題と言えるのが、リールモーターの劣化によるトルク不足です。リールの回転力が弱くなるために、キャプスタンによって送り出されたテープの巻き取りが間に合わず、テープがたるんで絡み痛んでしまいます。最悪、高価なテープが切れたり折り目が付いたりして、非常に厄介な問題を起こします。更に、早送りや巻き戻しでテープが止まってしまう症状も出ます。ソフトウェアサーボのため、安易に印加電圧を上げてトルクアップするわけにもいかず、モーターを代替品に交換するにしても調整が必要になり、きちんと対処しないと録音テープの互換性の問題も生じます。つまり中古整備が極めて困難で、経年劣化を承知で騙し騙し使わざるを得ないのが現状なのです。デザインが良いだけに、長く使いたいと願うユーザーにとっては実に残念な製品です。
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