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24.Victor HR-S10000 -VTR- (2016.5.8)
これもバブル時代に登場した高級機です。1988年発売で定価は276,400円。CLIAZなるブランドで編集機能に特に力が入っており、民生用でありながら業務機に近い位置付けです。一般人では絶対使わないであろう機能がてんこ盛りで、単にユーザーの所有欲を満たすものでしか無いと思うのですが、それもまたバブルのなせる業なのでしょう。とかく日本人は何でも機能を付けたがるのですが、合理的に考えれば必要な機能を絞込んでコストダウンした方が賢明です。それでも本機のような編集をメインにした超多機能VTRがあっても、選択肢としては面白いのではないかと思います。今ではこういう贅沢な商品はなかなか開発できない環境なので、興味ある存在であることは確かです。
ビクター機は映像処理回路の経年劣化が顕著なようで、大抵の個体で画像のエッジ周辺でピンク色っぽくなる症状が現れます。VRの調整だけで直るのかもしれませんが、資料が無ければ迂闊に手を出せません。可能性としてはコンデンサの劣化等も考えられます。それと古いVTR全般に言えることですが、メカポジションスイッチ(エンコーダーとも言う)の接触不良で誤動作を起こすケースも多々あります。キャプスタンを駆動するベルトの劣化も重大で、経年すれば必ず伸びたり硬くなったり変形して使えなくなります。パナソニックやソニーは劣化しにくいタイミングベルトを高級機に採用していましたが、ビクターは普通のベルトのために高級機と言えども長くはもちません。末期の頃は各部で強度不足の製品が横行し、特に負荷の大きいローディング機構が動作不能になることが多く、テープが入っていかなかったり出てこなくなったりと致命的な故障に繋がるケースが少なくありませんでした。VHSの生みの親である同社の没落は、VHSの衰退と呼応していたように思います。 ビクター機の劣化の顕著な点はもう一つあり、トラッキングが合わなくなって映像とHiFi音声のどちらかがずれて正常に再生できなくなることです。同社のVTRは元々他機での録画テープのトラッキングずれが起き易い傾向にあり、経年すると自己録再でもトラッキングが合わなくなるケースが多発するようです。サーボ技術が不足していたのかどうかはわかりませんが、VTRの根幹的な部分での性能維持が不十分では、いくら多機能で高性能なモデルを輩出してもユーザーからの信頼は得られないのではないでしょうか。
本機の場合はローディング機構に問題は無かったのですが、早送り・撒き戻しの後の停止時に電源が落ちたり、再生映像が乱れる等の不具合が多発し、詳細をチェックすることもなく処分に至りました。元々アナログ機としては画質や音質に定評があったものの、後のデジタル技術で補正された高画質とは比べるべくも無く、完動品で無い以上は今となってはコレクションする価値も乏しいというのが率直な感想です。
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