9.東芝 VARDIA RD-XD92D -HDDレコーダー- (2015.1.24)

Wチューナー搭載、地デジ時代の魁的高機能デジタルレコーダー。

私は映像や音声を記録する装置(レコーダー)には、長い間興味を持ち続けてきました。古くは磁気テープ(オープンリール/カセットテープ)による音楽レコーダーに始まり、映像録画時代に入ってからはビデオテープレコーダー(VTR)に相当入れ込んだものです。社会人となって最初の仕事がVTR関係だったのも、あながち偶然ではありませんでした。VTRは日本が生み出したメカトロニクスの芸術だと思っています。特にバブル期には超弩級マシンが数多く登場し、VTRの絶頂期と時を同じくして、日本の家電製品も世界を席巻しました。VTRに関しては色々と話題があるので、また回を改めて紹介しようと思います。今回は東芝のRD-XD92Dがテーマなので、同社のレコーダーの歴史とVTRからの流れ等も見ていくことにします。

1980~90年代に華々しくレコーダーの歴史を飾ったVTRでしたが、やがてアナログからデジタルへの時代へと移り、デジタル化した回路はそれまでの高度なメカニックを必要としなくなりました。その後、アナログVTRは次々に簡略化されて陳腐化して行くことになります。一方、高度なメカトロニクスの芸術はデジタルVTRへと受け継がれ、20世紀の終わりにはその頂点を極めました。そして時代が21世紀に入り登場したのが、現在主流のHDD(DVD搭載を含む)レコーダーなのです。

HDDレコーダーの歴史は、アナログ方式のTVチューナーを搭載した東芝のRD-2000から始まります。それまでのビデオテープを使用したレコーダー(VTR)とは異なり、記録媒体にHDDを使用して録画を行う画期的なもので、新たな映像記録の歴史が始まったことを同機は告げていました。初号機は何かに付けて問題が多いもので、ほどなく後継のRD-X1が登場します。このレコーダーは完成度も高く、同社のその後のレコーダーの流れを決定付けたと言えるものでした。当時はデジタルVTRからの転換期でもあり、価格も高くデザインも作りも現在とは比較にならない程豪華でした。今でもその存在感は決して色あせることはありません。

デジタル機と言っても当初は放送がアナログ波だったため、TVチューナーもアナログ方式であり、アナログ放送をデジタル信号に変換して記録していました。その後、衛星を使ったBS/CSデジタル放送が始まり、地上波もアナログに加えてデジタル放送が開始されます。デジタルへの完全移行までは両波の併用となり、その間に本機RD-XD92Dも登場しました。両波に対応するために、地上波に関してはアナログとデジタルの両方のチューナーを搭載します。しかもデジタル放送とアナログ放送をそれぞれ2チャンネル同時録画できたため、高価にもかかわらずかなり人気商品となりました。本機は録画用に600GBもの大容量HDDを搭載します。姉妹機にRD-XD72Dがあり、こちらは400GBのHDDでした。どちらもHDDに加えてDVDドライブを搭載します。HDDに録ってDVDにダビングする、それが同社のアナログ機の頃からの共通スタイルです。

本シリーズは前世代機にRD-XD91と同71が存在します。シングルチューナーで機能も一部こなれていない急造的な面もあり、経年で特にデジタルチューナーに不調を来たす例が多いようです。同社のフラッグシップはRD-Xシリーズであり、RD-XDシリーズはアナログ機のRD-XSのデジタル版と言う位置付けだと思われます。RD-XD91等に先行して地上アナログチューナーだけがWチューナーのRD-X6(HDDは600GB)が投入されており、ベースとなったのか外観もたいへん良く似ています。RD-X6のHDDを1TBにしたRD-T1もあります。当時RD-Z1と言う高級機もありましたが、筐体設計が全く異なるもので、一度入手して確認したところメンテナンス性が最悪だったのを覚えています。そのせいか同機は単発で終わっています。当時はたぶん各社が競ってデジタル機の新型を投入した時期なので、同社も色々模索していたのでしょう。流れとしてはRD-XD92D/72Dが、その後の主流であるRD-Sシリーズへと続きます。

さて、改めてRD-XD92Dを見てみましょう。本機は設計が古いためダビング10には対応していませんが、デザインに高級感があり極めて高機能なため、今でもその人気は高いようです。同社のレコーダーはネット機能と編集機能が特に充実しており、どちらかと言うとマニアックな部類に入ります。人によっては操作しにくいという評価も聞かれますが、私は東芝機を気に入っています。何よりも消耗品で壊れ易いHDDを簡単に交換して使えるのは、同社のレコーダー以外にありません(ブルーレイ機は換装するだけではダメなようですが)。ところが運が悪いのか、同社のレコーダーはDVDドライブに問題があるケースが多いのです。RD-XDシリーズはパナソニック製のSW-9574-Eを搭載しますが、後述するようにDVDドライブが故障するケースが後を絶ちません。

DVDドライブにまつわる不幸の歴史は、古くは悪名高き自社の東芝・サムスン(TSST)ドライブSD-W3002から始まります。部品が悪いのか設計が悪いのかわかりませんが、数年するとほとんどが壊れてしまいます(しかも全く使わなくても)。3年以上生き残ったドライブは、恐らく皆無に等しいのではないかと思います。大変静かで構造もシンプルだし、アルミベースで軽量化した意欲作なので、問題さえ起こさなければ間違い無く名機になったでしょう。あまりに故障が多発したため、交換用補修部品が途中からSW-9574-Eに変更されたくらいです。

SD-W3002の次に採用されたSW-9573-Eは、実は耐久性、静音性、書き込み性能等トータルバランスに優れたドライブです。私自身も壊れたドライブをあまり見たことが無く、その信頼性は群を抜いて高いものと思われます。書き込み速度を競っていた時期でもあったので、惜しいことに採用期間は短命だったようです。同ドライブは一時期、製造不良でメディアを回転軸に固定するためのマグネットが脱落する不具合を起こしたことがありました。もしSW-9573-Eでメディアを入れた時に異音がするようなことがあったら、この不具合を疑ってみることです。修理はいたって簡単で、脱落したマグネットを取り外し、エポキシ系の接着剤等で付け直せば良いのです。

余談ですが、SD-W3002の不良が多発した頃、LG製のGDA-4040Bが採用されたRD-XS24や同XS33なる機種もありました。ケース付のDVD-RAMに対応しないことからほとんど採用されなかったのですが、当時の機種にはTS(東芝)とLGの両方の刻印があるマウンタが使われていたりして興味深いものです。恐らくLG製のドライブを検討した時期でもあったのでしょう。そのせいか、SD-W3002からの換装に利用されることの多いLG製のGSA-4040BやGSA-4163B等とは相性が良いようです。これも余談ですが、SD-W3002で懲りたはずなのに、しばらくして同社は再びTSST製ドライブを採用した入門機を投入しています。案の定DVDドライブの故障が多発し、学習能力の無さを露呈してしまうことになりました。

優秀だったSW-9573-Eの後継がSW-9574-Eです。最大の特長は記録速度の高速化ですが、外観が黒から銀色になり、見た目も部品にも大分コストダウンした形跡がありました。製造もマレーシア等から中国となり、明らかに品質が落ちたのでしょうか。ある時期から突然死するケースが急増します。それまで何の問題も無く使用できていたものが、突然ディスクをチェックして下さいとメッセージを吐いて全く使えなくなるのです。私の経験では、高速なDVD-Rメディア(X倍速の形でメディア自体が次第に高速化している)でダビングした時に壊れるケースが多く、制御ソフトに何らかの不具合(欠陥)があって、ハードウェアを自己破壊するのではないかと推測しています。調査した結果、100%の確率でピックアップが壊れていることがわかりました。SW-9574-Eの後継機はSW-9576-Eで、改良により同様の故障はかなり減っています。ところが粗悪部品のせいで、今度はローディングベルトが伸びて滑るようになり、トレイが出なくなる不具合が多発することになりました。その後はパナソニックがDVDドライブから撤退(ブルーレイに移行)したこともあり、後継にパイオニア製ドライブが採用されるに至っています。

RD-XD92D/72Dはほとんど同じロジックボードのため、両者には共通する弱点があります。経年で部品が劣化して起動しなくなるもので、ER-0001やER-0006等のエラーコードを表示します。この原因は解明されており、C486の電解コンデンサー(100μF/16V)を交換することで大抵修理できます。なお、SW-9574-Eは後継のSW-9576-Eへの換装が可能です。また、本体のファームウェアが古い場合は、LG製のGSA-H10N等に換装することもできます。この場合、相性等によりうまくいかないケースもあるので、代替可能か色々試してみる必要があります。




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