1.NEC VLUESTAR PC-VL300RG (2015.1.18)

スリムデザインが印象的な省スペースデスクトップ機。

NECと言えば国内有数のパソコンメーカーであり、黎明期からの老舗でもあります。本機の発売は2008年9月なので、個人的にはそろそろレトロの仲間に入るかなといった感じです。CPUにはインテルのCoer2 Duo E7200を搭載しており、処理能力は比較的高いと思われます。OSがWindows Vistaなので、メモリーは最低でも2GB必要になるでしょう。1GBでもそこそこ動作はしますが、ある程度実用的に使おうとすれば、処理の重いバックグラウンドサービスをいくつかオフにする必要があります。HDDは比較的大容量の320GBを搭載しています。文書作成等が中心なら80GBもあれば十分でしょう。本機には拡張スロットが無いため、大きな機能の向上は望めません。それでもDVDスーパーマルチドライブやギガビットLANの搭載等、基本スペックは押さえた設計になっています。スリム型のDVDドライブと記録メディアリーダーを組み合わせ、ユニット化したものを5インチベイに搭載したモデルもあります。このシリーズには、RGの他にLGとMGの下位機種が存在します。個人的にもこのスリムデザインに憧れた時期があり、いつかは入手したいと思っていた機種の一つです。

本機の最大の特長は、外形を見れば一目瞭然のスリムさにあります。一般的なDVDドライブよりも少し厚い程度で、机の端に置けば邪魔になりません。もっともそのままではやや安定が悪く、ブックレット等の間に挟む等の工夫(放熱には要注意)をした方が良いと思います。写真でもわかるように、安定させるための薄い金属のプレート台が付属しますが、これを使うと普通のデスクトップ並のスペースが必要になってしまうので意味がありません。プレートはいかにも安物のデザインで、本当におまけといった感じです。そのせいか中古等では付属していないことも多いようです。

本機のもう1つの特長は、HDMI出力(写真の中央付近)が装備されている点です。HDMI端子付きの液晶TVが十分には普及していない頃のモデルで、当時としては結構先進的な装備だったと思われます。本機の性能を考慮すれば、リビングのハイビジョン液晶TVとの組み合わせも視野にあったのでしょう。もちろんRGB出力も装備しており、一般のモニターでも大丈夫です。背面パネルの上端左右にある長方形の黒い部品は、カバーを固定するロックで、内側にスライドするとカバーを外して内部にアクセスできます。これが結構破損していることが多く、部品の強度不足は否めません。

前シリーズでは端子部の上にUSB用の拡張パネルが付いていたのですが、本機では廃止されています(板金で目隠し)。

前記2点を除けば、他にはこれと言った特長はありません。スリムな割りに重量があり、台座が無いと安定も悪い代物です。同じスペックのパソコンと比べても処理が遅いと感じるし、これでもかと言わんばかりの大量のソフトウェアがプリインストールされている点も、個人的にはマイナス評価です。しかも、このパソコンには公になっていない重大な欠陥があります。

その欠陥とは、本機に使われているグラフィックチップ(GPU)が、経年の熱ストレスによってハンダ不良(断線)を起こし、電源は入るが起動しなくなる現象です。画面表示もされなくなるので症状はすぐに分かります。原因はチップの製造不良らしいのですが、欠陥品を販売したのはパソコンメーカーの責任です。ところが一切は闇の中で、一般には全くと言ってよいほど知られていません(私も知りませんでした)。企業で使用されるケースも多かったでしょうから、それなりにうまく立ち回っていたのかもしれません。個人所有では恐らく法外な修理費用が請求されたはずです。残念ながら老舗メーカーと言えども、企業体質はこんなものなのでしょうか。

修理するにはリフローによるチップ交換が必要です。これには大きなコストがかかり、今となってはそこまでして修理する価値はありません。それこそ部品取りにして残りを廃棄するしかありません。しかし、実は1つだけ簡単に延命する方法があります。チップをヒートガンで短時間高温にさらすのです。その程度でハンダ付けが回復するわけでは無いので、実際のところ完全な修理ができるわけではありません。恐らく高温にさらすことで基板が膨張・収縮し、一時的に断線したハンダ部分が接触するのでしょう。ミクロな目で見れば、断線部分は引きちぎられたような複雑な形状をしているはずです。元々信号端子のインピーダンスは極めて高いので、針の先でも接触しさえすれば、導通が回復するのではないかと思います。

●問題のGPU
GPUはこのヒートシンクの下にあります。ヒートシンクの熱設計が悪いのか、稼働中は手で触れられない程の高温になります。同種のチップを採用した他のパソコンメーカーでも同じ傾向が見られるので、チップ仕様そのものに問題があるのでしょう。本来であればもっと大きなヒートシンクを付けるか、ファンで強制冷却する必要があるはずです。それにしてもメーカーは十分な信頼性テストを行っているはずなのに、これだけの問題を見過ごすとは信じがたいことです。コストとマニュアル(データシート)重視で、経験的な知恵は働かなかったのでしょうか。
●ヒートシンク下
これが問題の核心であるNVIDIA製のGPUです。熱伝導シリコンが溶けて流れ落ちてしまっています。これだけ見ても、発熱し過ぎなのが一目瞭然です。チップはBGA(Ball Grid Array)と呼ばれるパッケージに入っており、基板にハンダ付けされる下側の端子部分が、沢山のハンダボールで出来ています。ハンダクラックの原因は、RoHos指令による鉛フリーハンダの影響が大きいと思われます。鉛入りハンダに比べてもろいため、熱ストレスの影響を受けやすいのでしょう。
●ヒートガン
ヒートガンの例がこれです。大体1500W位のものが多いようです。高性能なものは500度位の熱風を噴出すそうですが、写真の製品は安物のせいか、対象物は200度にもなりませんでした。この程度では当然鉛フリーハンダなど溶けるはずも無いのですが、意外にも不具合はほとんど解消します。

既に同じ症状での故障品50台以上をこの方法で修理しましたが、回復率は実に95%を超えています。つまり故障は同じ原因であると考えるのが合理的で、これが欠陥品だと断定する由縁でもあります。そんなわけで、当時憧れだったモデルも完全に色あせてしまいました。果たしてこの修理でどれくらいの期間延命できるでしょうか。ハンダが再び酸化する等して断線状態になるまでの期間だとすれば、せいぜい数ヶ月程度ではないかと思うのですが・・・

<追記>
その後、2年ほど経過して再び何台か修理を試みましたが、復旧しなかったりじきに不良になったりと、思ったように修理できなくなっていました。恐らくハンダ部分の経年劣化が進み、これ以上の延命はほぼ不可能な時期にまで至ったのだと思われます。仮にこの記事を見てトライしたとしても、現在では復旧する見込みは相当低くなっていることが予想されるので、素直に部品取りにでもした方が賢明です。

<補足>
NECのパソコン部門は、今は事実上lenovoの傘下にあります。PC9801シリーズで国内最大のパソコンメーカーとなり、長い間市場を牽引してきた同社ですが、その凋落ぶりは家電メーカーのそれと同類のようです。実は以前からいずれこうなることは予想されました。なぜなら、同社のパソコンは元々評判ほどの出来では無いと思っていたからです。本機のようにパッと見はユニークな物もあるにはあったのですが、全体的な印象としてはメンテナンス性が悪い、性能が低い、重い、価格が高い、デザインがありきたりと、どれをとっても良いところがありません。コレクションにしたいような機種等全く無く、これからも使おうとは思いません。比較すればlenovoのパソコンの方が出来が良く、同社の傘下で国内製造と販売を受け持つ程度が身の丈にあっているのかもしれません。




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