■ビットマップイラストの活用-2

●画像解像度について
一般のイラストは、ビットマップと言って細かい格子で仕切られた1つ1つの格子に直接色が付けられています。この1つの色片を画素と呼びます。解像度とは一定の長さの中にこの画素がいくつ並んでいるかで表します。通常、長さの単位はインチ(1インチは約2.54センチ)で表されており、解像度はdpi(ドット・パー・インチ)すなわち1インチの長さにいくつ点(格子)があるかで表示します。MacintoshでDTPが始まった時、画面解像度は72dpi(1インチに72個の点がある)でした。同じ解像度でそのまま紙に印刷すると画面の長さと同じ長さに印刷されるわけです。

しかし、72dpi程度では画素が粗すぎて印刷した場合にジャギー(ギザギザ)がはっきりわかります。では、どの程度であれば目立たないでしょうか。1画素に対してRGB各256階調(グレースケールでは黒が256階調)の表現ができるとすれば、300dpiあれば通常の印刷では問題ありません。大体、画面解像度の4倍程度です。では2倍程の150dpiではどうでしょうか。酷いレベルでは無いものの一見してジャギーだとわかり、実用には少々難があると思われます。データ量は圧縮しない場合に長さの2乗に比例します。長さが2倍になれば面積が4倍となるため、データ量も4倍になるわけです。なお、300dpiを超える解像度でデータを作成しても、ほとんど印刷品質に差はありません(見た目の違いがあまり無い)。データ量が飛躍的に増えるために、不必要に大きな解像度は印刷時間の増大など弊害の方が大きくなります。

DTP初期の頃と違って、レーザープリンタ等でも600dpi~1200dpiと大きな解像度を持つに至りました。なのに300dpiの元データでいいの? という疑問は当然あると思います。これには理由があります。一般的なプリンタは1画素につき2階調(点を打つか打たないか)しか表現できません。256階調を表現するためにタテ16×ヨコ16の点を使って擬似的に目的の色を表現しているわけです(この手法をディザと呼びます)。たくさんの色点の集合体を間近で見ても何が何だかわからないのですが、少し離れて見ると点の集合が特定の色に見えて、全体として何が描かれているのかわかるわけです。つまり、1点について2階調の表現しかできないプリンタでは、例え1200dpiと言っても実質的な解像度はさして高くないのです。商業印刷で使われるイメージセッターでは3000dpi~4000dpiとはるかに高い解像度を持っているため、これらに出力する場合にバランスの良いデータ解像度が300dpiと覚えておくと良いでしょう。最近では、コンシューマ向けのインクジェットプリンタでも4800や9600dpiと言う超高解像度機が販売されています。上記のような擬似的な表現によって実質的な解像度は下がりますが、解像度だけならイメージセッターに匹敵する性能で、肉眼では写真と区別がつきません。改めて技術の進歩に驚かされます。

解像度とデータの大きさ、表示サイズについて簡単に説明しましょう。下図において、左は72dpiの解像度、右は300dpiの解像度の画像です。画面解像度が72dpiであることから、同じ条件で画面に表示すると右は左の約4倍の大きさになります。データ量では約16倍(圧縮無し)です。左が50ドット(=50ピクセル)のサイズとすれば、右は約200ドットになるわけです。印刷用の画像はこれだけ大きく描かないといけないということです。右の画像を300dpiのプリンタで印刷すると、見た目の大きさは左の画像とほぼ同じになります。縮小される分だけ緻密に点が描かれるため、よりきれいに線が見えるわけです。

  

ビットマップイラスト集の印刷用データは300dpiが基本で、長辺側で800~1200ドットを標準にしています。上述の右画像の4倍位の大きさなので、印刷した時に大体同じ位のサイズになると思えば良いでしょう。従ってカット絵としては手頃なサイズになるわけです。

画面と印刷物との関係は、画面解像度をあくまでも72dpiを基準に考えているために、お使いの環境では両者の大きさに違いが出るかもしれません。Windowsの画面解像度は96dpiを基準にしているためMacintoshとは異なりますし、マルチスキャンディスプレイでは表示サイズによって解像度が変わるため、単純には印刷物との比較ができません。しかし、ここに示したように同一条件下で比較すれば、両者の関係は常に同じになります。技術の進歩によって液晶画面の解像度が上がっており、今では印刷解像度に迫る勢いです。ディスプレイが印刷と変わらないほど緻密になれば、両者の境界が曖昧になるのは確実です。印刷の意味はほとんど無くなり、やがて真のペーパーレス社会が訪れることでしょう。

●画像モードについて
イラスト集-Bでは、データ形式によって画像モードが異なります(※注)。PhotoShopやIllustrator等はCMYKモードをサポートしていますが、一般のビジネス/ホームソフトではサポートされていません。こういった用途でお使いになる場合は、PhotoShop等のDTP用ソフトを使って画像をRGBモードに変換します。保存時に実際にイラストを使用するソフトがサポートする画像形式に変換して下さい。

MacintoshであればPICTやTIFF、WindowsであればBMPやTIFFです。TIFFはMacintoshとWindowsで圧縮条件に違いがあるため、お使いのOS上で変換するようにして下さい。JPEGならどちらもサポートします。ただし、圧縮による劣化は避けられず、保存を繰り返すと更に劣化するので、使用する直前に変換するようにします。マスク処理した画像は変換によってマスクが無効になりますので、Illustrator等に直接利用する場合はEPSのままお使い下さい。ただし、EPSを出力するためにはポストスクリプトプリンタが必要になります。一般のプリンタではプレビュー用の画像(画面表示用の粗い画像)が使われてしまうので、一般のプリンタへの出力を前提とすれば、画像変換した方が良いということになります。マスクは別の方法で加えることもできますので、お使いのソフトでご確認下さい。

●イラスト集のバージョンによる内容の違い
※Ver.1ではEPS版はCMYKモード、JPEG版はRGBモードで別製品となっています。
※Ver.2では汎用性を重視して、メインとなる保存形式にPhotoshop(PSD)を採用し、画像モードも一般的なRGBモードとしました。
※Ver.3ではオプションの形でEPS版を復活しました。
2020年以降はVer.3を改良・再編集することで新たにスタートしています。