■見出しの重要性

本である以上、書籍の項目内容を示す見出しは重要です。紙媒体の本と同様に、電子媒体においてもそれは変わらないはずです。ところが、一般的な電子ブックはあまりそれを重要視していないように思います。制作者は何が書いてあるのか読めばわかる、とでも考えているのでしょうか。確かに目次を必要とするのは、じっくり読み込むタイプの本です。マニュアルのように、見たい場所をすばやく探す必要があるものも含まれます。しかし、例えばマンガ等で、わざわざ目次を調べて読みたい作品へと進む人は少ないでしょう。小説のように、見出しでネタバレするようなものは逆に困ります。電子ブックはこうした類のものが多いため、これまで見出しがないがしろにされていたのかもしれません。確かにスマホでながら読みする分には、あっても無くても良いような機能です。使う人がいなければ無いのと変わりません。

その点、PDFは様々な書籍で利用されているので、目次からページ移動できる機能が搭載されています。確か初期の頃はそうした機能は無かったと記憶しますが、今は目次が利用されているケースも多く見られます。ただし、一度目次のページへ戻って探す必要がある(2022年現在では左サイドにページのサムネイルが表示され、クリックすれば目的のページに移動可。しかし、ページ数が多いと探すのが困難な上、サムネイルでは雰囲気でしかページを判別できない。)のと、現在読んでいるページがどの章に属するのか明示されないので、使い勝手としては中途半端と言わざるを得ません。PDFは基本的に紙媒体からの置き換えを狙ったもので、それ以上でもそれ以下でも無いと言うのが私の個人的な見解です。

せっかくの電子書籍なのに単なる紙媒体の延長では意味が無い、私自身は最初からそう考えていました。電子ブックに目次や見出し機能を搭載するのは当然である、それが一貫した考えだったのです。そこでAD-BOOKにはページ上部に常に見出しを表示する機能を付けました。今自分が読んでいるのはどんな内容のものなのか、見出しによって一目で大筋を把握できるわけです。目次はいつでも参照できるように、ブックコントローラーの中にそのためのNAVIボタンを配置しました。ナビによって目次を見れば本の全体像がすぐにわかるので、マニュアルやカタログ等では特に威力を発揮します。しかも単なる目次にとどまらず、ナビページの中の見出しをクリックするだけで、ダイレクトにその項目(章)へと移動することができるのです。名称をナビとしたのは、目次に本の中を航海する羅針盤の意味を込めたかったからです。

下図はAD-BOOK「edia」のナビです。ナビには電子ブックの各種設定も含んでいますが、アクセスする機会が多いと判断してのことです。操作は極力シンプルな方が良いので、設定も統合した形にしたわけです。図は下の方に目次が並びます。ウインドウに表示しきれない部分はスクロールバーで移動します。大容量の電子ブックの場合は目次だけでも長大になりますが、紙媒体と違ってナビページはいくらでも長くできる上に、アクセスも簡単でより便利に扱えます。

 

AD-BOOKの場合は、目次に章の主タイトルと副タイトルが用意されていて、1つの章を更に細かく分類することができます。内容の簡単な説明文によって、目的のページがより探しやすくなっているのです。目次からジャンプする先のページは各章の最初ですが、章のボリューム(ページ数)と中身が大体わかっていれば、ページを直接指定して移動するダイレクトページアクセス機能を使い、素早く目的周辺のページへと進むことも可能です。AD-BOOK「MIRAGE」のようにページゲージを搭載する電子ブックは、この機能を更に進めたものと言えます。

AD-BOOKはあらゆるページ移動機能を搭載するわけですが、これをどのように実現しているのでしょうか。電子ブックに含まれる章数と各章のページ数は、あらかじめ設定ファイルに記述しておきます。これを元にブックコントローラーがインデックスを作成し、各種コントロールを行っているわけです。電子ブックを作る際に、章フォルダ番号とページ(ファイル)番号を付けたのは、そのための準備でもあります。データであるページを連番の数字で管理することで、ページ移動やタイトル表示のための計算処理を簡単にしています。データの構造自体が電子ブックを形作る要素であることから、AD-BOOKにはブック構築のためのソフトが存在しないのです。

しかし、このシステムには1つ課題があります。ブック制作途中や制作後にページを追加・削減したい場合に、連番を改めて振り直す必要がある点です。大量のページを含む場合に、ファイル名を変更した数から後のファイル全てを変更するのは大変です。もちろん章の場合も同様です。この課題に関しては専用ユーティリティを用意し、自動的にファイル名を変更する形で解決する予定でした。結局マンパワーの関係等で実現には至りませんでしたが、この課題さえ解決すれば、ほとんど弱点の無いシステムになったと思います。

準備中・・・