■AD-BOOKの書庫となる「BOOK CENTER」

ROOTSライセンス版の改良によって、1つのビューワーで複数の電子書籍を扱えるようになったことから、大規模な書庫を構築するための仕組みを考案しました。それが「BOOK CENTER」です。ROOTSライセンス版と同じ仕組みで開始できるものなら、他のビューワーも同居できるようになっていて、当時、サウンドプレーヤーとして別に開発していたAD-SoundPlayerも含めることができました。書庫自体がAD-BOOKのスタートプラットフォームの役割を持っていて、下図はその全体像です。サンプルのため1冊しか登録していませんが、大量に登録して大規模な図書館のようなものも構築できるようになっています。登録数に制限は無く、コンピューターが扱える整数の範囲内であればいくらでも書庫の規模を大きくすることができます。ただし、書庫のページリンクがあまり長くなると見にくく(あるいは使いにくく)なるため、例えば1ページに50冊登録したとして、100ページ程度までが妥当な範囲だと考えています。それでも5000冊の本を管理できるため、個人を含む一般的なビジネス用途なら十分だと思います。実のところBOOK CENTERは設定ファイルで登録を管理する簡易的な仕組みのため、巨大な書庫を実現しようとすれば現実にはデータベースシステムを導入する必要があります。salaやMIRAGEでネット配信を考えた時、データベースとの連携を視野に設計を進めていましたが、計画がストップしたことで立ち消えになった経緯があります。そのため、BOOK CENTERに応用することも残念ながらできませんでした。

簡単にBOOK CENTERの特長を説明しましょう。上部にはブックジャンルに加えてブックタイトルによるAND・OR検索を搭載しており、読者は大量の登録冊子の中から目的の電子書籍を容易に検索・閲覧できます。1ページに表示する件数を任意に設定でき、複数のページでも直接ページ指定して移動できます。表示メニューには書籍のサムネイル、タイトル、概要を表示できるため、電子ブックを探す際の目安として役立ちます。登録数が大きくなった時に見やすくなるよう、サムネイル無しのリスト表示もできました。ROOTSの持つレジューム機能を利用できる仕組みにより、本を最初から読むことも途中から続きを読むことも可能です。ページ上下には多目的リンクエリアを用意してあり、ホームページへのリンクや画像・テキストによる紹介・宣伝、アフィリエイト等、様々な利用ができるようになっています。また、デザインのカスタマイズ機能により、ユーザーオリジナルの画像やデザインを取り入れたり、BOOK CENTER自体をホームページにすることもできます。

BOOK CENTERが完成したところで実は困ったことがあります。大量のAD-BOOKを登録して使えることは前述した通りですが、実際に動作を検証しようとすると、登録すべき対象が手元にはわずかしかありませんでした。もちろん擬似的に机上での検証はできますが、実際の動作に確実に反映できるかどうかわかりません。つまり、実用段階での検証に委ねる結果になったわけです。そのため積極的にBOOK CENTERをアピールすることもできず、結果的に内輪だけの利用にとどまってしまいました。そういう意味ではAD-BOOKも大量の章とページを登録できるものの、巨大な電子ブックを作った時に果たして実用になるのかと言う同様の課題を抱えているわけです。百科事典でも作らない限りは問題になるようなことは無いと思いますが、一度はそんなレベルの本にも応用してみたかったものです。

AD-BOOKを通じて様々な電子ブックに取り組んだわけですが、BOOK CENTERとROOTSを組み合わせることで初期の目標を一応は達成できたことになり、AD-BOOKの開発はこれをもって終了としました。振り返るとセキュリティの問題に直面した時点で、ある意味このプロジェクトは終わっていたのかもしれません。当初の思惑通り進まなかったのは残念ですが、いつまでも過去にしがみついていても進展は無いので、電子ブックに関しては新たな目標を持って進もうと思います。

BOOK CENTERもサンプルがあるのですが、登録してあるコンテンツのライセンス上の問題があり、現状では公開を保留しています。他のAD-BOOKシリーズと同様に環境があれば実際に体験して頂きたいので、いずれ利用を制限する形ででも準備できれば公開したいと思います。