3.最初のAD-BOOK

最初に考えたのが、最終版ROOTSの原型となった電子ブックでした。電子ブックを開始するためのスタートページを備え、そこから電子ブックウインドウを独立して開くAD-BOOK独自のスタイルです。下図はスタートページの見本で、電子ブック開始ボタンの他に注意書きや操作方法へのリンクを配置しています。初めてAD-BOOKに触れる場合でも、すぐに操作等が理解できるように配慮しました。

 

スタートページはホームページ内に配置しても良いし、電子ブックプログラムを直接起動するプラットフォームにもなります。スタートページで1クッション置くことで、電子ブックの独立性を担保したわけです。当時はブラウザから別ウインドウを開き、その中でコンテンツを見せることが先進的でもあり流行でもあったのです。AD-BOOKでもいち早くこのトレンドを導入しましたが、後に大きな問題に発展することを、その時はまだ意識することはありませんでした。詳細については後継のAD-BOOK開発の説明過程で再び取り上げます。

まずは新たな電子ブックの原型を作るのが第一目的であったため、基本機能を重視したシンプルな形で開発をスタートしました。実はAD-BOOKは当初から電子ブックの用途としてマンガ(コミック)を想定していました。スタートページに「Manga Viewer」とあるのはそのためです。誰でも手軽に読める本と言えば、やはりマンガが最も手頃なターゲットになると考えてのことです。当時もマンガ雑誌は大変な部数を誇っており、選択肢の筆頭になるのはごく自然でもありました。ただし、マンガ専用としてしまうと汎用性に乏しくなるため、一般的な電子ブックとして十分機能するだけのポテンシャルは必要です。シンプルと言っても、電子ブックに求める基本的な機能は備えていなければなりません。その理想は当初からかなり高いもので、他に類を見ないものでした。

 では、AD-BOOKならではの特長を順に説明していきましょう。下図がAD-BOOKの主画面です。初期のAD-BOOKのサンプルが資料に無かったため、ROOTSの古いバージョンを掲載しましたが、デザインは概ね似たものだったと思います。

 

電子ブックウインドウの上部には、本の情報を表示するエリアを設けました。今見ている章番号、章の主タイルとサブタイトル、ページ番号を表示して状況が明確にわかるように配慮しています。紙媒体の本の場合は、目次や手触りによるボリューム感等から、感覚的にある程度読んでいる位置がわかるのですが、電子ブックの場合は単なる1画面でしか無いため直感ではわかりません。本の概要がつかめてこその電子ブックであると言うポリシーは、AD-BOOKには絶対に外せない要素だったわけです。そこに1つ目のこだわりがあります。

コントローラーはワイド画面に対応するため、ウインドウの右に配置しました。本である以上はページ送りボタンは必須です。コントローラーには「進む」「戻る」「最初に戻る」「章単位で進む」「章単位で戻る」といった基本ページ送りボタンを備え、上下にスクロールするボタンも加えて長いコンテンツを見やすくしています。また、章とページ番号を指定して直接目的ページに移動するダイレクトムーブ機能により、ページアクセスを飛躍的に向上しています。更に、いつでもナビゲーションを呼び出せるようにして、直接章単位でページ移動できる機能も搭載したのです。これら考えられるほぼ全てのページ移動機能を備えたことが2つ目のこだわりです。

3つ目のこだわりはページを読む方向です。紙媒体の世界では右とじ・左とじの区別があり、ページめくりの方向によって右進行と左進行の2種類があります。一般的に文章が横書きなら右方向に進むようにページをめくり、日本語の縦書きのような場合は左方向に進むようにページをめくります。見開きにした時、それぞれが自然に読むことができるように配慮されているわけです。電子ブックにもその概念を持ち込み、移動ボタンに変化を与えました。読む方向を読者に明確にするため、例えば右送りの場合には右移動ボタン自体を左送りより大きくしたわけです。見開きモードの無いAD-BOOKではあまり意味はありませんが、感覚的にあった方が自然だと考えてのことです。もちろん見開きモードを搭載するAD-BOOK「edia」では、あって然るべきものと考えます。

4つ目のこだわりは自動ページ送り機能です。一般的な雑誌のように文字数が多いと送り速度をどの程度に選ぶか難しいですが、マンガのようにほぼ一定に読み進められる場合には、固定速度にしてもさほど支障はありません。AD-BOOKでは標準に対して+2段階、-2段階の合計5段階の速度から選べるようにしました。これもシリーズ共通の考え方です。ところで、紙媒体の本が大小様々なサイズがあるように、AD-BOOKは基本的にサイズフリーです。画面に収まらない場合はスクロールバーが表示されて、どんなサイズでも見ることができます。使い勝手が悪くなるのでなるべくモニターに収まるサイズが望ましいのですが、モニターの画面自体が大小様々なので、スクロールバーが必要になる場面も当然出てきます。それを考慮して自動ページ送りには自動スクロールも働くようにしました。そのタイミングや速度もサイズによって自動調整するようにしたため、かなりスムーズに読むことができるようになっています。

AD-BOOKは、やがて更なる高機能化の流れ(後のAD-BOOK「edia」)に進むために、このシンプルなビューワーをAD-BOOK「Lite」として残し、実用的で扱いやすくすることに主眼を置いて開発を継続しました。「Lite」はその後「SuperLite」として機能強化と便利さの両立を果たします。、Q-MEMOと呼ぶクイックメモリーを備えてページを記憶し、ナビからいつでもそのページに移動できるようにしたのもその1つです。ediaで実現したコントローラーを独立したウインドウで開き、自由に場所を移動して置けるようなモードも追加し、より高い操作性を実現しています。

AD-BOOKは電子ブックを極める実験の場でもあったので、高機能化の流れを追及した「edia」では様々な機能を追加しました。最終的に電子ブックにそこまでの機能が必要なのかと言うほどの機能を満載したわけですが、電子ブックの持つ可能性をとことん追求できたことには満足しています。




● HOME ●