2.AD-BOOKの原点となったホームページ

AD-BOOKは最初から電子書籍として構想していたわけではありません。むしろホームページを本を読むような感覚で見ることを念頭に置いていました。例えばネット上で小説やマンガを読むような場合を想定してみて下さい。最低限必要なのはページを進めるボタンと戻るボタンです。下図はその基本イメージになります。

 

しかし、紙媒体の本のように自由に読み進めるためには、ホームページに単なるページ移動ボタンを備えただけでは十分ではありません。目次を見たり任意のページに移動したり、しおりのような形でいつでも同じページを参照したりと、様々なブックリーダーとしての機能が必要になります。従って、最初はホームページに埋め込む形でブックリーダーの機能を搭載することにしました。現在のブラウザ上で読むブックリーダーと着想は同じです。幸いブラウザにはJavascriptという強力なプログラム実行環境が搭載されていて、ブックリーダーの機能を実現することはさほど難しいことではありませんでした。しかも、紙媒体では不可能な動的なコンテンツまでも含めることができたのです。また、ページ内でURLを指定することで、インターネット上の他の情報にシームレスにアクセスでき、ブラウザが内に秘めた可能性は無限に思えるほどでした。

当時を振り返ると、AD-BOOKの開発当初はDTPに専念していたこともあって、作業環境はMac(Macintosh)が中心でした。ちょうどWindowsが勢力を伸ばしていた時期でもあり、作業環境自体もMacからWindowsへの移行を模索していた頃になります。ところが、DTPは本来の効率アップの目的よりもコストダウンの道具とみなされる傾向が強まり、次第に作業そのものにハードワークが要求されるようになっていきました。印刷会社も大手が地方にまで進出して業界の淘汰が進むことになり、身近でも廃業する業者が増えて取り巻く環境は悪化の一途でした。その頃には所持するMac関連の設備も古くなり、DTPを続けるためにMacの環境を一新するかWindowsに移行すべきか、迷いながらの日々だったのです。

DTP環境が厳しくなる一方で、インターネットは確実に一般にも浸透して広がり始め、時代は印刷からネットへと動き始めていました。個人を中心としたホームページ作りが盛んになるにつれて、企業も積極的にインターネット参入に取り組むようになったのです。COSMOLIGHTがDTPからインターネットへのシフトを目指したのは、当時の情勢からもごく自然の流れであったわけです。そんな中で、前述したようなブラウザの機能に目を付けて、まずはホームページの中で本のように扱える方法を考えました。残念ながら当時の資料は古いMac関連の媒体内にあって、環境が完全にWindowsに移行した今では参照できません。そのため一部の移行した資料と曖昧な記憶になりますが、当時を思い出しつつ簡単に紹介しておきたいと思います。

電子ブックと言えば、その頃は専用端末(今で言えばAmazonのKindleのようなもの)自体を示す言葉で、ホームページ上の本を電子ブックと呼ぶことはあまり無かったように思います。私自身はコンピューターの世界でも本のイメージを強く持っていたため、当初から電子ブックの名で通していました。最初に作ったホームページ上の電子ブックは、ブラウザの表示ウインドウ上部にページを操作するコントローラーを配置し、下部の大部分をコンテンツ表示エリアに当てていました。下図がその全貌です。コントローラーには電子ブックを呼び出した元のホームページに戻る「Home」ボタン、目次を表示する「Navi」ボタン、自動でページを送る「Auto」ボタン、サウンドをオン・オフする「Sound」ボタン、本の使い方等を表示する「Info」ボタン、ページを前後に進める移動ボタンとかなりシンプルなデザインですが、後のAD-BOOKシリーズにつながる実用的な基本機能を備えていました。しかし、コントローラーを上部に配置した場合、マウス操作が意外に煩雑となることがわかり、途中で下部に配置することに改めました。Windowsのツールバーが画面の下部にあるように、目線と操作を考えるとその方が明らかに自然だと考えたからです。

コントローラーとページエリアは別々のフレームにして、コントローラーの操作がページフレームに反映されるようにしています。また、制御プログラムはコントローラーフレーム内にJavascriptで記述しています。ページはファイル名を通し番号で管理することで構造を単純化しました。基本的な構造は、後のAD-BOOKシリーズでも共通です。この新しい電子ブックは、簡素ながらもなかなか使い勝手が良くて、しばらくは細かな機能追加や外観の改良に終始していたのですが、その後ディスプレイが正方形に近いものから現在主流のワイド型へと転換していったことで、外観バランスが悪くなりました。上下が詰まって横に大きな空きができるようなデザインになってしまったのです。見た目も使い勝手も悪いことから、次はウインドウの右に配置する形にしました。それと同時に、電子ブック自身が電子書籍としてもホームページそのものにもなれるように、ホームページの一部から独立させることにしたわけです。ROOTSに至るAD-BOOKの基本スタイルはこの時に生まれました。




● HOME ●